「フリー素材だから、自由に使っていいはず」と思って使った素材が、実は商用利用NGだった。あるいは、クライアントに納品したあとで、利用規約違反を指摘された。副業でデザインを始めたばかりの頃は、こうしたトラブルが、いちばん怖いものの一つではないでしょうか。
そこでこの記事では、フリー素材(写真・イラスト・フォントなど)を、仕事で使うときに確認したいポイントを、チェックリストの形で整理します。つまり、素材サイトの紹介ではなく、「使う前に何を見るか」「納品後にどう残すか」という、実務の手順が中心です。おすすめの素材サイトを知りたい方は、Webデザインが垢抜ける!おすすめフリー素材・イラストサイト5選もあわせてご覧ください。
※この記事は、デザインの実務経験をもとにした一般的な情報です。そのため、法律の解釈や個別の判断ではありません。契約や権利で迷ったときは、素材の提供元や、弁護士などの専門家に確認してください。
「フリー素材」でも、自由に使えるとは限らない
「フリー」には、いくつかの意味があります。
- 無料で使える(お金はかからない)
- 商用利用ができる(仕事で使ってよい)
- 著作権が放棄されている(誰でも何をしてもよい)
しかし、多くのフリー素材は、1つ目の「無料」だけを意味していて、著作権は、作った人に残っています。そのうえで、「このルールの範囲なら、使ってよいですよ」と許可されているのが、一般的です。逆に、ルールの範囲を超えると、素材の無断使用にあたるおそれがあります。
つまり、チェックするのは「フリーかどうか」ではなく、その素材に付いている条件です。
使う前の6項目チェックリスト
素材を使う前に、次の6つを順番に確認します。
| 項目 | 確認すること | 見る場所 |
|---|---|---|
| 1. 商用利用 | 仕事・広告・販売物に使ってよいか | 素材サイトの利用規約・ライセンスのページ |
| 2. クレジット表記 | 作者名やサイト名の表記が必要か。必要なら、どこにどう書くか | 同上 |
| 3. 加工・改変 | 切り抜き・色の変更・文字入れをしてよいか | 同上 |
| 4. 再配布・販売 | 素材そのままを、データで渡したり売ったりしてよいか | 同上 |
| 5. 用途の制限 | ロゴ・商標・グッズ・成人向けなどの制限がないか | 同上 |
| 6. 人物・ロゴの写り込み | 顔が分かる人物や、他社のロゴが写っていないか | 素材そのもの |
どの項目も、「素材ごと」ではなく、素材サイトのルールを見ます。ただし、人物や他社のロゴの有無は、素材の中身を見る必要があります。
1. 商用利用ができるか
まず、仕事に使ってよいかを確認します。たとえば、「個人利用のみ」の素材を、会社や事業の用途で使うと、規約違反になるおそれがあります。
注意したいのは、「無料」と「商用利用OK」は別だという点です。特に、素材サイトによっては、個人利用は無料で、商用利用は有料やライセンス購入が必要な場合もあります。
また、商用利用が認められていても、点数や用途に上限があるサイトもあります。たとえば、イラスト素材サイトの「いらすとや」は、商用利用で使える点数に上限があるとされています。ただし、Canvaの中で使う場合は、点数の制限がないと報じられています(2024年3月時点)。条件は変わることがあるため、使う時点の規約を、必ず確認してください。
2. クレジット表記が必要か
クレジット表記とは、「写真:〇〇さん」のように、作者や提供元の名前を、素材の近くに書くことです。
- 必要ない素材サイト(多くの写真素材サイトは、表記を求めていない)
- 必要な素材サイト(Creative Commonsの一部のライセンスなど)
「表記は必須ではないが、書いてもらえると嬉しい」というサイトもあります。その場合は、任意なので、書かなくても規約違反にはなりません。
表記が必要な場合は、書き方や場所も規約で決められていることがあります。規約の指定どおりに書いてください。
3. 加工・改変をしてよいか
素材の一部を切り出す、色を変える、文字を重ねる、といった加工が、認められているかを確認します。
多くのフリー素材は、一般的な加工(サイズ変更・切り抜き・色調整・文字入れ)を認めています。ただし、「加工を禁止している」素材や、「加工したものを、元の作者の作品のように見せてはいけない」といったルールがある素材もあります。
4. 再配布・販売をしてよいか
ここは、デザインの仕事で、特に間違えやすいポイントです。
多くの素材サイトは、素材そのものを、そのままの形で配布・販売することを禁止しています。たとえば、次のような使い方です。
- 素材のデータを、そのままクライアントに渡す
- 素材を、ほとんど加工せずに、データ集やテンプレートとして販売する
- 素材を、グッズ(Tシャツ・マグカップなど)に、そのまま印刷して売る
一方で、デザインの一部として使う(バナーやチラシの中に、素材を組み込む)のは、認められていることが多いです。ただし、「素材をデータとして渡してよいか」は、サイトによって扱いが違います。納品の方法とあわせて、確認が必要です。
5. 用途の制限がないか
「商用利用OK」でも、禁止されている用途がある場合があります。
- ロゴ・商標への使用:素材を、会社や商品のロゴとして使うことを禁止している素材サイトがあります。ロゴは、1つの素材を、独占的に使うことになるためです。素材をロゴの一部に使いたいときは、特に注意してください。
- グッズなど、素材自体が商品になる使い方
- 不適切・違法・誤解を与える使い方:人物写真を、本人が商品を推薦しているかのように使う、など
6. 人物・ロゴの写り込み
素材サイトのルールが「商用利用OK」であっても、素材の中に写っているものについては、別の権利が関わることがあります。
- 顔が分かる人物:写っている人には、肖像権やパブリシティ権があります。素材サイトの規約が、「商用利用OK」でも、使い方によっては、問題になる場合があります。人物写真を、広告や、特定の商品・サービスのイメージとして使うときは、特に注意が必要です。迷ったら、顔が分からない写真や、イラストを選ぶほうが安全です。
- 他社のロゴ・商標・ブランド:商品のパッケージやロゴが写っている写真は、商用利用で、誤解を招いたり、トラブルになったりするおそれがあります。
- 建物・看板・車のナンバーなど:場所や所有者が特定できるものが、はっきり写っている場合も、注意します。
素材サイトは、投稿者が、必要な許可(モデルリリース・プロパティリリース)を取っているという前提で運営されていることが多いですが、すべてをサイトが確認できるわけではありません。最終的な確認は、使う側の責任と考えておくのが、安全です。
実例:「おすすめ素材サイト」で紹介したサイトの規約を比べる
ここまでの6項目を、おすすめフリー素材・イラストサイト5選で紹介した5つのサイトに当てはめて、まとめました。各サイトの規約ページも貼っています。実際に使うときは、リンク先で、最新の条件を確認してください。
| 確認項目 | イラストAC | ICOOON MONO | O-DAN | フキダシデザイン | Loose Drawing |
|---|---|---|---|---|---|
| 種類 | イラスト | アイコン | 写真の検索サイト | 吹き出し素材 | イラスト |
| 個人利用 | ○ | ○ | 配布元による | ○ | ○ |
| 商用利用 | ○(素材が「脇役」の場合。商品の主役にする場合は、有料の商品化ライセンスが必要) | ○ | 配布元による | ○(無料で使えるのは20点まで。超える場合は、規約の条件が必要) | ○ |
| クレジット表記 | 不要 | 不要 | 配布元による | 不要 | 必須ではない(紹介リンクは歓迎と記載) |
| 加工(色・サイズ・切り抜き) | ○(透かし入りのまま使うのは不可) | ○ | 配布元による | ○ | ○ |
| 素材そのままの再配布・販売 | ✕ | ✕ | 配布元による | ✕ | ✕ |
| クライアントへ素材データを渡す | ✕(デザインに組み込み、素材を取り出せない形で納品) | △(素材単体で渡すのは再配布にあたる可能性があるため、要確認) | 配布元による | △(著作権の譲渡は不可。素材単体で渡すのは要確認) | △(素材単体で渡すのは再配布にあたる可能性があるため、要確認) |
| ロゴ・商標登録 | ✕(ロゴ制作・商標登録・意匠登録は不可) | ✕(商標登録は控えるよう記載あり) | 配布元による | ✕(商標登録は不可) | △(ロゴへの利用の記載なし。要確認) |
※○=認められている、✕=禁止されている、△=条件つき・要確認。2026年10月に、各サイトの規約・ヘルプを確認した内容です。
表から分かる4つの注意点
この表で、特に気をつけたいのは、次の4点です。
- O-DANは、素材サイトではなく、写真の検索サイトです。写真ごとに、配布元のサイトが違うため、ルールも、配布元ごとに違います。「O-DANで見つけたから大丈夫」ではなく、写真の配布元の規約を、確認する必要があります。
- イラストACは、クライアントに素材データをそのまま渡すことができません。 納品するときは、デザインに組み込んで、素材を取り出せない形にします。
- ロゴに使うのは、イラストACもICOOON MONOも、避けたほうが安全です。 「商用利用OK」と「ロゴにしてOK」は、別の話です。
- フキダシデザインは、無料で使えるのが20点までです。 点数に上限がある素材は、使った点数も、記録に残しておくと安心です。
※イラストACの無料会員は、1日の検索回数やダウンロード数に制限があります。回数は変わることがあるため、公式のページで確認してください。
フォントも、同じ考え方で確認する
フリーフォントも、「無料=自由に使える」ではありません。次の点を確認します。
- 商用利用が可能か
- ロゴに使ってよいか(使えない、または条件つきのフォントもあります)
- Webで使えるか、印刷物で使えるか(用途ごとにライセンスが分かれている場合があります)
- フォントの再配布(データとして渡すこと)が可能か
- クレジット表記が必要か
特に、ロゴにフォントを使う場合は、クライアントが、のちに商標登録をする可能性も考えておきます。フォントの文字の形をそのまま使ったロゴは、商標として登録できない場合があるため、依頼時に伝えておくと安心です。
フォントの選び方は、Webデザイナーおすすめフォントまとめもご覧ください。
Creative Commons(CC)ライセンスの見方
素材によっては、「CC BY」などの表示がある場合があります。これは、Creative Commonsというライセンスの種類を示す記号です。見方の基本は、次のとおりです。
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| BY(表示) | 作者の名前などの、クレジット表記が必要 |
| NC(非営利) | 商用利用ができない |
| ND(改変禁止) | 加工してはいけない |
| SA(継承) | 加工したものを、同じライセンスで公開する必要がある |
仕事で使うなら、NC(非営利)が付いている素材は、使えません。また、ND(改変禁止)が付いていると、トリミングや文字入れもできないため、デザインの素材としては使いにくくなります。
後から困らないための「記録の残し方」
素材サイトの規約は、あとから変更されることがあります。素材が削除されて、あとで確認できなくなることもあります。
そこで、使った素材は、次の情報を、記録として残しておくと安心です。
- 素材の名前、またはページのURL
- ダウンロードした日付
- 利用した素材サイト名と、ライセンス・規約のページのURL
- 規約のスクリーンショット(ダウンロードした時点のもの)
- 使った案件名、使った場所(バナー・チラシ・サイトなど)
案件ごとのフォルダに、スプレッドシートを1つ置いておくと、あとから、クライアントに質問されたときにも、すぐに答えられます。
クライアントに伝えておきたいこと
素材を使った仕事では、納品のときに、次のことを伝えておくと、トラブルを防げます。
- 使った素材の提供元と、利用条件(クレジット表記が必要かなど)
- 素材そのものを、別の用途に流用しないでほしいこと(ロゴへの転用、再配布など)
- 納品物を、ほかのデザインに作り変える場合は、素材の条件を、改めて確認する必要があること
契約書や発注書に、素材の扱いを書いておくと、さらに安心です。契約まわりの確認は、契約書、何を確認すればいい?フリーランスの契約まわり不安を解消するテンプレート4点セットも参考にしてください。
私の経験から
素材サイトを使う時は、まず利用規約を確認するようにしています。デザインはクライアントありきの仕事なので、何か規約違反があればクライアントに迷惑がかかってしまいます。そのため、まずは今回の案件で使っても大丈夫な素材なのか、ということを重要視しています。
デザインを始めたころ、この利用規約を確認しておらず、個人利用はOKですが、商用利用ができない、という素材がありました。幸い納品直前で気付いたので、素材の差し替えをクライアントに伝え、修正したのでことなきを得ましたが、気づかなければ迷惑がかかるところでした。
デザインデータは、基本的に、画像とPDFまでを渡しており、クライアント側で改変しないようにお願いをしています。
記録として残るようにメール等の文章でのやりとりを基本としています。何かあった時に、自分の身を守る、ということもフリーランスでは必要なことだと思います。
まとめ:迷ったときの判断基準
- 「フリー」でも、著作権が作者に残っていることが多い
- 確認するのは、商用利用・クレジット・加工・再配布・用途の制限・写り込みの6項目
- 人物や他社ロゴが写っている素材は、特に慎重に扱う
- フォントやCCライセンスも、同じ考え方で確認する
- 規約は変わるので、使った時点の条件を、記録として残す
- 迷ったときは、素材の提供元に確認する。確認が取れないときは、別の素材に替える
「使えるかどうか分からない素材」は、使わないのが、いちばん安全です。素材選びで迷ったときは、条件がはっきりしているサイトに戻って、選び直してください。
イラスト素材を探すなら、商用利用ができて、規約も分かりやすい「イラストAC」が定番です。上の表のとおり、素材そのものをクライアントに渡せないなどの条件はありますが、デザインに組み込んで使う分には、仕事でも使いやすい素材サイトです。

